『kawawarawa之弐』


1.
初めて会ったときの驚いた顔。
深く澄んだ目に引き込まれそうだった。
でも、何に見えたですって?!



2.
カッパと間違えたことを謝りつつ誤魔化しつつ駅まで送る。
「え?大学の。先生っすか。」
「研究員。あたしね、わらわって調べてるの。キミ、知らない?」
「ギクッ」



3.
偶然・・じゃないよね。あたしを待ってた。
興味があってって言うけど、何か隠してるみたいな。
なぜだろう、無視できない・・・。



4.
川柱とわらわの話。父が酔って言い出したことがあったっけ。
あれは熱病のようなものだと。
よく意味が分からなかったけど、母の曇った顔が触れてはいけないことなのだと語っていた。



5.
やっぱり彼は知ってる。
かつてここにあった大岩の痕。
いつの間にか川底からも消えうせたと云い、今はただ暗い淵が誘っているかのようだ。
なぜそんなに必死になってとめるの。
触れ合った肌が熱い。



6.
悪い予感だった。止めなければ。
だけどその刹那、自分の猛る血を自覚する。
そしてもうひとつの深い水底へ吸い込まれていく。



7.
ねえ、あやまらないで。
悪い気がしてるわけじゃないのよ。
でも、「手伝ってほしいの」って弱みをうかがってるあたしは悪いお姉さんだね。



8.
むせ返る草いきれのなかを川まで下ると、今度は湿った日陰が白い二の腕を粟立たせる。
僕はそれを執拗に舐め取る。
そんな妄想を何度繰り返しただろう。



9.
あたしは彼を利用しているのだろうか。
逢瀬のようなこの行為のなかで、熱いまなざしに応えてしまう夢想を描いている自分に気がついた。


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